一口にホームページといっても、デザインの質やユーザビリティ・システムの善し悪しなど、そのクオリティが問われる点はいくつも存在します。
それに加えて商品の売買が関与するECサイトでは、セキュリティの安全性・ユーザーへの対応力・万が一トラブルに発展した場合の対応など、通常のWebサイトよりも考慮しなければならない点が多く、サイトの構築にも運営にもかなりの労力を要します。
しかし出来の良いサイトを作るにはそれ相応の費用が掛かってしまうもので、どの程度の相場なのか分からないままでは、求めているサイトのクオリティと費用感の落としどころがなかなか掴めずに悩んでしまうことでしょう。
…実はECサイトの構築には規模や予算に応じてそれに見合った最適な構築方法が、ある程度確立されているのをご存知でしょうか?本記事では代表的な構築方法を予算別に詳しく掘り下げていきますので、お困りの方はぜひ一度お目通してみてください。
5つの構築方法と費用相場
ECサイトの構築方法は主に、下の表にまとめた「モール型」「ASP型」「オープンソース型」「パッケージ型」「フルスクラッチ」の5つに大別されます。
費用が掛からない順に、一つずつ確認していきましょう。
ECサイト構築手法比較表
開発費用 | ランニングコスト(月額) | 制作期間 | サーバーの用意 | Web知識の必要性 | |
---|---|---|---|---|---|
モール型 | 無料~10万円 | 無料~5万円 | 数日~2週間 | 不要 | 不要 |
ASP型 | 無料~100万円 | 無料~数万円 | 数日~1か月 | 不要 | 不要 |
オープンソース型 | 50万円~500万円 | 数万円~数十万円 | 数か月~ | 必要 | 必要 |
パッケージ型 | 300万円~1000万円 | 数十万円~100万円 | 数か月~1年 | 必要 | 不要 |
フルスクラッチ | 500万円~1億円 | 数十万円~100万円 | 1年~ | 必要 | 必要 |
モール型
Amazonや楽天市場・ヤフーショッピングといった大手企業が運営するサイトを利用する方法です。
自分だけの店舗を構えるのではなく、ECモールという巨大なショッピングセンターの中に間借りして商品販売をするイメージだと分かりやすいかもしれません。
自店舗を出店する「テナント型」(楽天市場・ヤフーショッピングなど)と、商品だけを出品する「マーケットプレイス型」(Amazonなど)の2つのタイプがあり、他の手法に比べて圧倒的にコストがかからないので、あまり考えずに最低限の労力でとりあえず商品を販売したい方にはおすすめです。
メリット
高い集客効果
運営母体のネームバリューのおかげで単独で出店する場合と比べてユーザーの母数が桁違いなので、どんな時でも最低限の集客効果が見込めます。
会社の知名度に関係なくユーザーの目に触れやすいため、マーケティングに費用と労力を割かずともある程度の売り上げを確保することができるでしょう。
システムと信用度
商品の売買に必要なシステムが既に用意されているので、特別な知識は必要ありません。誰でも簡単に出品することが可能です。
一連のシステムが出来上がっているので、自社サイトでは必ず考慮しなければならないセキュリティ面での問題を、ここではまったく気にする必要がありません。
また「Amazon」「楽天」がバックについているのでユーザーの安心感を勝ち取りやすく、ユーザーが購入に至るまでの心理的なハードルが下がった状態で商品販売を開始できます。
デメリット
希薄なブランディング性
Amazonで商品を買ったら「Amazonから届いた」、楽天市場のアプリを開いたら「楽天で買った」という認識が非常に強くなりやすいため、ECモールでは「〇〇という名前の店から商品を買った」感がかなり希薄になります。店ではなく商品を並べるマーケットプレイス型では、なおさらそれが顕著です。
どれだけ売り上げが伸びたとしても、悲しいことに自店舗の知名度にはなかなかつながりません。
ランニングコスト
売り上げが芳しくなくとも月額費用が発生し、なおかつ売り上げ額が増えれば増えるほどサイトの使用料が必要なことがほとんどです。初期費用は他の手法と比べて格段に安いですが、中長期的には知らず知らずのうちにコストが嵩んでしまうことがあります。
元々ある程度の売り上げが見込めているのであれば、思い切って最初から自社だけのサイトを構築した方が良い場合もあるでしょう。
ASP型
ECサイトに欠かせない「カート」システムを提供する会社が用意したプラットフォームサービス、ASP(Application Service Provider)をレンタルして構築する手法です。
代表的なものとして、「shopify」「BASE」「STORES」などが挙げられます。調べていくうちに、一度は目にしたことがあるのではないでしょうか?
メリット
手軽さと制作期間
自社独自のサイトとして立ち上げる中では最も費用を抑え、かつ迅速に制作を進められる手法です。
早いものであれば数日、遅くとも数週間で公開に至ることができます。
ECサイトを運営していくうえで必要な基本機能があらかじめ備わっており、自社サーバーや専用のソフトウェアを用意する必要もありません。
圧倒的な使いやすさ
記事の更新や商品の追加など、日々コンテンツの更新があるWebサイトでは「管理画面」からページの管理を行います。ASPの管理画面はシンプルで分かりやすいものが多いため、Webの知識や経験があまりない方であっても使いやすく、はじめてWebサイトに触れる方にもおすすめです。
デメリット
没個性
基本的なテンプレートが決まっているため、サイトの見栄えを大きく変更することができません。
既存の他ECサイトと似た構成になるので、どうしてもユーザーの印象に残るサイトを作りたいという場合には不向きでしょう。
できることの制限
最近のECサイトでは、「ユーザーの購入履歴や閲覧情報などの細かなデータを収集し、そのユーザーの趣味嗜好にあった商品の広告を優先して表示する」などどいった、ビッグデータを利用した繊細なマーケティング戦略が主流になっています。
低価格のASPにはもちろんそこまでの機能はありませんし、ましてやデザインすらもあまり変えられないため、売り上げ向上のための改善点を洗い出したところで、それを実際のサイトに反映する手立てがありません。
オープンソース型
ネット上にフリーで公開されているプログラム(オープンソース)を利用してサイトを制作する方法です。
ホームページ制作で良く使用される「WordPress」もこれに分類されますが、ことECサイト制作においては「EC-CUBE」という名前をよく耳にすることでしょう。
Web制作のスキルがあるかどうかで費用感が大きく異なるのが特徴です。
メリット
カスタマイズ性
オープンソースにはWebサイトを構築するうえでのシステムの基盤があらかじめ用意されており、それを土台にして組み立てていきます。オープンソースをそのまま反映するだけでももちろん運営可能ですが、HTML/CSS/JavaScript の知識があれば、デザインやサイトの動きを自由にアレンジできます。
PHPやJavaといったバックエンド寄りのプログラミング言語が書けるのであれば、システムの拡張も可能です。
社内開発であれば低予算
上の表で示した値段はあくまでWeb制作会社などに委託した際の値段です。
オープンソース自体は無料であるため、外部委託するのではなく自社の中で開発を進める場合はあまり予算を割かずに制作が可能です。社内に十分な人材が確保できているのであれば、自社開発を検討しても良いでしょう。
デメリット
脆弱性
誰にでも公開されているプログラムであるがゆえに、悪意を持った人間が意図的にシステムの穴を突くことが可能です。特に顧客情報をサイト内に記録している場合、情報漏洩のリスクを考慮しておかなければなりません。細心の注意が必要です。
定期的なアップデート
上記の理由から、オープンソースには定期的なアップデートが発生します。サイト構築後も、新しいバージョンがリリースされるたびに都度更新しなければなりません。
アップデートによってこれまでのシステムが機能しなくなる場合もあり、迅速にそれに対処できるだけの知識と経験が必要です。外部会社に制作を委託している場合には、そのたびに保守費用が発生してしまうこともあります。
パッケージ型
ECサイトを構築・運営していくうえで必要な機能を網羅したシステム(ECパッケージ)を購入し、そこに内蔵されたシステムを組み合わせてサイトを構築する手法です。
代表的な運営母体として、「ecbeing」「コマース21」などが挙げられます。
メリット
機能の拡張性と柔軟性
カート機能・決済機能のようなフロント機能から在庫管理システム・受注発送システム・データアナライズのようなバックオフィス機能まで、ASPにはない圧倒的に豊富なシステムを搭載しており、必要に応じて自由に組み合わせてカスタマイズすることが可能です。好き勝手に付け外しできるので、あとから「これが欲しい!」となったときにもすぐに対応できます。
各会社の既存のシステムを基にカスタマイズしていくため、システムの複雑さの割に開発期間はそれほど長く掛かりません。
サポートとセキュリティ
大抵サポートプランが用意されており、ECパッケージを購入した会社から適切なサポートを受けながら安心して運営することができます。サイトの構築だけでなく運営・マーケティングのサポートまで網羅しているものもあり、たとえはじめてのECサイトの運営であっても踏み切る足がかりになるでしょう。BtoB向け・BtoC向けのように様々な販促形態を想定したパッケージが用意されているものもあり、自社の販売形態や商品の内容によって最適なものを選択できる点も魅力の一つです。
またオープンソースとは異なりセキュリティ対策も非常に堅く、余計な気苦労に疲れる心配もありません。
デメリット
コスト
導入するシステムが比較的高次なこともあって、これまでの手法とは比べ物にならないくらいの開発費用が掛かります。加えて、システムの維持や管理のためのランニングコストもそれなりに必要なので、長く運用するにあたってはしっかりとした予算が必要です。
システムリニューアル
変遷目まぐるしいWeb業界では、今の常識であっても4~5年もすれば全くの別物に移り変わっていきます。
ECパッケージをそのまま使用しているとWebサイトの作りが一昔前のままになってしまったり、セキュリティ面での脆弱性が高まったりしてしまうため、定期的に大規模な改修が必要です。
初期費用ほどではありませんが追加費用が科されてしまう場合もあるため、都度売上額と照らし合わせての検討をする手間が生まれてしまいます。
フルスクラッチ
あまりなじみのない言葉ですが、システム開発の分野においてフルスクラッチとは、完全に真っ白な状態でゼロベースからサイトを自作することを指します。
フルスクラッチで作成した場合、サイトのデザインは勿論のこと、オリジナルのシステム構築、顧客情報や商品情報などのデータベースに登録した情報の連携・管理に至るまでをすべて、自社だけで運営することとなります。
メリット
独自性・ブランド力
ここまでに紹介した手法で作られたECサイトはどれも基本的に同じようなシステムを使うため、どうしても似たり寄ったりな感じになります。が、フルスクラッチではデザインからシステムの何から何に至るまで、どれとも似つかない完全にオリジナルのサイトを構築することだって可能です。
自社の独自性、高級感、ブランド力をユーザーに強くアピールすることができます。
社内管理
ECサイトの全ての管理を社内で行うのであれば、外部に費用を払う必要がありません。
サイトの大規模リニューアルやシステムの改善が必要な場合であってもすべての作業が社内で完結するため、発案から実装までスピーディーに対応できます。
また顧客情報をダイレクトに取り扱うこともできるので、より緻密な戦略を練り、マーケティングを最適化することだって可能です。
デメリット
人材の確保と圧倒的なコスト
Webページの見た目を整えるデザイナー、ECサイトの複雑なシステムを構築するエンジニア、サーバーの管理と保守を行うインフラエンジニア、チームをまとめるディレクターなど、Web制作の経験に富んだ多種多様な人材を自社内で確保する必要があります。
もちろん金額的にも時間的にも相当なコストを要し、年単位での開発プロジェクトになることは必至です。
保守運用
何かしらシステムに問題が発覚したとき、ASPやパッケージであれば販売会社側である程度サポートしてくれたり、オープンソースであれば解決策がネット上によく転がっていたりします。ですがフルスクラッチでは、他の手法では割と簡単にこなせる保守対応をすべて自力で対応する必要があります。
かなり頻繁に手直しが発生することもざらにあり、場合によってはシステムの根本から見直しをしなければならないこともあるため、公開後の労力もかなり必要です。
予算別におすすめの構築方法を紹介
作りたいサイトの規模感、想定される売上額、割くことのできる予算額によってECサイトの構築の仕方は大きく変わります。すでに大まかな予算が決まっているのであれば、それに見合った手法を選びましょう。
無料〜10万円未満の予算ならモールかASP
労力も金額もあまりかけずに、手軽に始めるのであればモール出店かASPの2択です。どちらも費用感的にはあまり変わらず、Webの専門的な知識も必要ありません。
モールに出店するかASPを導入するかは、自社としてのサイトが欲しいかどうかで判断しましょう。
今後さらに規模を拡大していきたいという展望が既にあるのであれば、ASP型から始めることをおすすめします。既にあるASP型のECサイトを別の形で改修してリニューアルしていくことも可能なので、営業規模が大きくなるにつれてECサイトのクオリティも徐々に上げていくという戦略をとってみるのも良いかもしれません。
10万〜100万円未満の予算ならASPかオープンソース
「大々的に費用を割くほどの余力はないが、それなりのクオリティのサイトを作りたい」というのであればASPの導入かオープンソース開発がよいでしょう。
数十万円あればグレードの高いASPを導入することもできますし、オープンソースを用いて少し複雑な独自のサイトを作ることもできます。
100万〜500万円未満の予算ならオープンソースかパッケージ
数百万円の予算であれば、実績のあるWeb制作会社に依頼してオープンソース構築をしてもらうこともできます。自社内ではできないような複雑なプラグラムであっても、外部委託してしまえば導入することが可能です。
さらにもう少し余力があるのであれば、パッケージに手を出すことも視野に入れましょう。
コストは掛かりますが、オープンソース構築よりも手軽に整ったサイトを制作することができます。
500万円以上の予算ならパッケージかフルスクラッチ
オンライン販売が事業の巨大な一つの柱として確立している、または将来的にその見込みがあるのであればそこに割く費用を惜しむ理由はありません。高額な出費であってもクオリティの高いサイトを作った方が、ゆくゆくはプラスになります。
パッケージの中には、サービス・プランによっては1000万円に至るものもあります。余裕があれば検討してみましょう。
500万円以上、可能であれば1000万円以上の予算があれば、フルスクラッチ開発に踏み切ることができます。
ユニクロやZOZOTOWNといった大手企業のECサイトはフルスクラッチで作られています。制作にあたっての参考になるかと思いますので、一度ご覧になってみることをおすすめします。
▼サイト例:ZOZOTOWN
ECサイトの見積もりに影響する費用
「サイトの外観」「決済の仕組み」「在庫管理」などECサイトを構成する要素はいろいろとありますが、どれを導入するのか、どこに力を入れるのかはそれぞれのサイトによってまちまちです。
予算の範囲内でできるだけクオリティの高いものを作れれば良いのですが、実際のところ、それぞれの作業段階でどのくらいの費用が掛かるのでしょうか?
決済手段の追加
たとえば家具・家電のようにファミリー層をターゲットにするのであれば、或いはデジタルコンテンツやイベントグッズのような単価の安い若者向けの商品を出すのであれば、それらに応じてメインを担うであろう決済方法は変化します。前者の場合であればクレジットカード、後者ではPaypayやLinePayなどのID決済がそれにあたるでしょうか。
たとえフルスクラッチであったとしてもECサイト上での決済システムを自力で導入することは稀で、基本的には決済代行会社のサービスを利用することとなります。決済手段は多ければ多いほどユーザーの離脱率を軽減することができるので、あまり妥協せずにより多くの決済手段を導入しておきたいところです。しかしその分費用も嵩むことになるので、場合によっては導入できる決済手段に限りがあるかもしれません。自社の商品を鑑みて、ターゲットに合った最適な組み合わせを検討してください。
一般的な決済代行会社の場合、支払う費用は初期費用(数万円程度)、ランニングコスト(月額数千円)、手数料の大きく分けて3つになります。
手数料として一つに括っていますが、実際は以下のように分かれています。
決済手数料
決済が1件発生するたびにかかる費用。決済金額のうち何%を支払うかが、決済会社によってあらかじめ決められている。
決済方法によってその倍率は異なり、クレジットカードは3~10%、コンビニ決済は2~5%、電子マネーは3~4%程度が一般的。
取り扱う商品の内容によって数字が前後。トランザクションフィー
金融機関との決済情報のやりとりで発生する、いわゆるデータ通信量。決済手数料と同様に、1件当たりの固定額があらかじめ決められている。
取消手数料
一度結んだ決済の取り消しが行われた場合に発生する手数料。1件に付きおよそ5円。
チャージバック手数料
クレカの不正利用があった場合など、何らかの形でユーザーから返金が要求された際に発生する手数料。
よく確認せずに、後から思っていた以上の値段を請求されたなんてことになりかねないので、手数料についてはじめのうちに特に入念に確認しておきましょう。
サイトデザインの変更
最初からある程度型の決まっているASP・パッケージではあまり気にしなくてよいですが、オープンソースやフルスクラッチでの開発ではサイトのデザインを考えなければいけない場面もあります。
Webサイトのデザインは一見簡単そうに思えますが、実は一筋縄ではありません。フォントの使い分けや配色といったデザインの基礎知識は勿論のこと、ユーザーがぱっと見たときにどこに何があるか分かりやすい導線の配置、多種多様な画面幅のデバイスのどれで見てもスタイルが崩れないようなレイアウト、UI/UXを意識してのつくりなど、通常のデザインとは異なる点が多々あります。
余程自信がない限り、自作で一から作るよりも専門のWebデザイナー・コーダーに依頼する方が早いうえに正確です。
Webデザインの委託にかかる費用は、サイトの規模(=必要なページ数)に依存します。最初にユーザーの目に入るトップページの制作には5万~13万円、下層ページは1ページあたりその半分くらいというのがおおよその相場です。
…とはいってもHTMLコーディングを行わなければWebサイト上には反映されないため、その費用も合わせて外注するとなると実際はそれ以上の値段になります。
バックオフィス業務システム
フルスクラッチが難しい理由は主に、このバックオフィス業務システムにあります。
バックオフィス業務とは直接売り上げには関与せずとも運営上必要な業務の総称で、ECサイトでは「商品登録」「受注管理」「在庫管理」「決済手続き」「配送」といった、ユーザーの目からは見えない裏側で行われている処理・作業がこれにあたります。既に自社の中で管理システムが充実している場合は別ですが、十分な環境が整っていない場合非常に手間がかかるうえに、人為的なミスが発生してしまう可能性も高まります。これをシステムとして外部から導入することのメリットは、たとえば以下の通りです。
効率化・ミスの削減
人件費削減・人材教育コストの削減
ほかの業務へ集中できる
基本的にはそれ専門の経験豊富な外部業者に委託することで、安心して任せることができます。有事の際の解決スピードも速いです。費用の相場は月額およそ5万円程度を基準に、サービスの幅によっては30~50万円程度まで伸びるといった形になります。
どうしても外部に任せたくない場合には、クラウドサービスを自社で利用する手立てもあります。扱うシステムに脆弱性や不備がないかなど気にしなければならない点も多いため、十分に確認してから導入するように心がけましょう。
物流アウトソーシング
「商品の在庫管理が煩わしい」「管理のための人員が不足している」といった理由で、いっそのこと自社まわりの物流全般を外部に委託したいというEC事業者は多く、それらを代行するために物流アウトソーシング(物流代行サービス)が確立しました。前述のバックオフィス業務の一つにあたります。
従来の「物流アウトソーシングサービス」は商品の出荷~発送を担うものが主でしたが、最近では注文データの取り扱いやその集計・データ化までを担う「フルフィルメントサービス」が流通しつつあります。先の項目でも触れたように、物流まわりにかかる労力を一任することで商品の開発やマーケティングの方にだけ集中できるという認識が広まったため、今では当たり前のサービスになっています。
物流アウトソーシングでは、固定の基本料金、商品の倉保管料(商品量に依存)に加えて、商品の入出荷があるたびに商品の入庫量・検品料・梱包料・発送料・棚卸作業料・返品作業料などが発生します。
料金の相場はECサイトの規模によりますが、自社ですべて賄う場合とアウトソーシングする場合での費用感にどの程度の差が出るかを考慮し、利用するかどうかを検討しましょう。
また、何か問題が発生した際に自社対応よりも対応が遅れてしまうこともあるため、小規模な運営の場合では利用しない方が良い場合もあるでしょう。
集客・マーケティング費用
ECサイトを設立しただけで勝手に商品が売れていくわけではないので、自社サイトの宣伝・マーケティングは常に欠かせません。
ECサイトの主な集客方法は、他のWebサイトやホームページ・SNS・動画投稿サイトなどで継続的に広告を貼り、広告経由でユーザーを獲得することです。比較的簡単に作成でき汎用性の高い画像媒体のバナー広告、製作費はかかるが宣伝効果の高い動画広告など、その形態はいくつもあります。1回の広告掲載に必要な費用はその掲載頻度や形態によってまちまちです。基本的には、予算をかければかけるほどユーザーのもとに広告が表示される回数が増え、よりユーザーの目に付きやすい場所に表示されるようになります。
しかし広告を貼り続ける以上、継続的に費用が発生してしまうのがネックです。
その点、SEO(Search Engine Optimization; 検索エンジン最適化)を利用した施策は非常に有意義です。SEOとは、簡単に言うとGoogleの検索エンジンから見たサイトの評価のことです。SEO的に優秀なサイトであればあるほど、関連ワードで検索した際により上位でヒットするようになるため、自然検索(オーガニック検索)での顧客の流入が増えます。広告による集客とは違って特にコストをかけることなく集客効果を上げることができるため、長期的にサイトを運用するのであれば是非対策しておきましょう。
ECサイトを作成する際の注意点
どういうサイトを作りたいのか、どんな方法で作っていくのかが決まって、いざ着手!
…の前に一度立ち止まって確認してみましょう。
年商だけで選ぶと手数料の負担が重くなる
ECサイトの作成方法はそのサイトで「どの程度の年商が見込めるか」によって変わり、一般的には見込みが一億円以下であれば「ASP」、それ以上であれば「パッケージ」という目安になっているようです。
ECモールや一部のASPでは、売上高が上がるにつれて手数料が増えていくことが通例です。はじめのうちは少額かもしれませんが、売上が増すにつれて知らず知らずのうちにその負担額も上昇してしまいます。
もし手数料で多くの負担が発生し始めているのであれば、長い目で見たときの負担を考えて、手数料がかからない方法でのサイト構築(パッケージへの移行、オープンソースの利用など)に移行してしまったほうが良いでしょう。
将来的なリニューアルを見据えて
Webサイトは一度作ったら終わりではありません。
「お目当ての商品がどこにあるかわからない」「ボタンが小さくて使いずらい」といったように、制作者側からはまったく見えていなかった指摘がユーザーから飛んでくることも往々にしてあります。そうでなくともWeb業界の変遷は早いもので、3~5年に一度くらいの頻度で定期的にサイトのリニューアルを実施しなければなりません。ユーザーの目に触れる機会の多いECサイトでは尚更です。
サイト制作を始める前に、常日頃のサイト維持費と将来的なリニューアル費も勘定に入れて費用感を想定しておきましょう。
ランニングコストの確認
この記事の中でも何度か登場しましたが、継続的にサイトを管理するための費用としてランニングコストが掛かるサービスがいくつも存在します。
例)ASP、パッケージ、決済代行など
機能が豊富になればなるほど、それに伴ってランニングコストも増加します。あとから想定外の費用に驚くことがないように、あらかじめ十分に確認しておきましょう。
補助金制度の活用
ECサイトを開設する際には、国や地方自治体から補助金が受け取れることをご存知でしょうか?
日本での代表的なものに「IT導入補助金」「事業再構築補助金」「小規模事業者持続化補助金」「ものづくり補助金」などが挙げられ、どれも中小企業や小規模事業者に向けたサポートとなります。
なかでもIT導入補助金は経済産業省が運営する支援事業で、事業者のITツールの新規導入に対する補助金となります。ECサイトの作成に当たっては、この補助金を利用する事業者が多いようです。ECサイトの作成はこれのデジタル化基盤導入枠という枠組みにあたり、受発注ソフト・決済ソフトの導入などを対象にみなすと定められています。何を新たに購入するか、何を新たに導入するのかによって補助金額は変動しますが、条件を満たした状態で申請すれば最大350万円の支援を受けることができます。
サポート体制とセキュリティ対策
ECサイトを運営するうえで、特に決済まわりでのトラブルは必ず付き纏います。個人レベルでのトラブルであればまだしも、もしユーザー情報の漏洩などがあっては一大事です。
商品の販売には顧客との信頼関係がなにより大切です。一つのミスが大幅な利益の低下を招いてしまうかもしれないことを、常に頭の隅に入れておいてください。
万が一でも自社の運営するサイトで問題が起きてしまったときのことを考えて、システムを外部委託する際にはアフターサポートの手厚い信用できる会社を選ぶようにしましょう。
とりわけパッケージを用いて制作するECサイトではほぼすべてのシステムを一つの会社に全面委託する形になることがほとんどなので、制作が始まる前に十分に相手を吟味する必要があります。簡単に妥協せずに、色々な会社を比較してみましょう。
まとめ
最後までご覧いただきありがとうございました。
せっかくであれば、より少ない費用でより良いサイトを作りたいですよね。
BRISKのブログでは、他にもECサイトにまつわるいろいろな情報を発信しています。
ECサイトの制作に興味をお持ちの方は、是非そちらもチェックしてみてください。
売れるECサイトの商品画像とは?写真撮影と作成のコツ
【完全解説】ECサイトをリニューアルする時に抑えておきたいポイント
ECサイトの制作でお悩みの方は是非こちらからお気軽にご相談ください!
ECサイト制作ならBRISKにお任せ!