
人手不足や物価上昇などを背景に、中小企業では限られた人材や予算を有効に活用しながら、コストを抑える取り組みが求められています。しかし、単純に経費を削減するだけでは、従業員の負担増や業務品質の低下を招くおそれがあるため注意が必要です。そこで有効なのが、DXを活用して業務そのもののムダを見直す方法です。手入力や紙業務、確認作業などをデジタル化・自動化すれば、作業時間や残業代、印刷・郵送費、在庫管理など幅広いコストの見直しにつながります。
本記事では、中小企業がDXで削減しやすいコストや具体的な方法、導入手順、費用対効果の判断方法、失敗を防ぐポイントまで解説します。自社の業務改善を進める際の参考にしてみてください。
目次
中小企業のコスト削減にDXが有効な理由

DXは、業務効率化やコスト削減を進める手段として中小企業でも活用されています。単なる経費削減にとどまらず、業務の進め方そのものを見直せる点も特徴です。ここでは、中小企業のコスト削減にDXが有効な理由について解説します。
単なる経費カットではなく業務プロセスのムダを減らせる
DXによるコスト削減は、備品費や広告費などの支出を単純に減らすだけではありません。業務の流れを可視化し、手入力や転記、紙書類の回覧、進捗確認など、時間や人手を使っている工程そのものを見直せます。デジタル化が進んだ企業ほど、コスト面などで効果を感じる割合が高い傾向です。
不要な工程をなくしたり、複数の作業を一つの仕組みにまとめたりすれば、同じ業務をより少ない工数で進められます。業務の進め方そのものを改善することで、継続的にコストが発生しにくい仕組みをつくれる点がDXの特徴です。
定型業務の自動化で作業時間や残業代を抑えられる
手順やルールが決まっている業務は、自動化によって作業時間を短縮しやすく、繁忙期などの時間外労働を抑えることにもつながります。
自動化によるコスト削減では、単純に人員を減らすのではなく、限られた人材を付加価値の高い業務へ振り向ける視点も重要です。入力や集計に費やしていた時間を顧客対応や営業、業務改善などへ充てることで、人件費の増加を抑えながら生産性を高めやすくなります。
データを一元化してミス・重複・確認作業を減らせる
顧客情報や受発注、在庫などのデータを部署や担当者ごとに別々のファイルで管理していると、同じ内容を何度も入力したり、最新情報を確認したりする作業が発生しがちです。情報を一元管理し、関係者が共通のデータを参照できるようにすることで、こうした重複作業や確認の手間を減らせます。
さらに、システム間でデータを連携すれば、転記そのものを減らせるため、入力間違いや更新漏れの防止にも有効です。受発注のデジタル化についても、作業効率の向上や人的ミスの軽減、取引記録の検索性向上といった効果が示されており、情報を探す時間や修正にかかる工数の削減につながります。
小さく始めて継続的な改善につなげやすい
DXは、最初から全社の業務を大きく変更する必要はありません。まずは入力作業や受発注管理など、課題が明確で効果を確認しやすい業務から導入し、実際にどの程度の時間やコストを削減できたかを確認しながら対象を広げる方法があります。
対象を限定すると、初期投資や現場への負担も抑えやすくなります。
コスト削減の前に見直したい業務のムダ

コスト削減を進めるには、ツールの導入前に、日々の業務に潜むムダを把握することが重要です。手入力や紙業務、待ち時間などを洗い出すことは、改善すべき箇所の把握にも有効です。ここでは、コスト削減の前に見直したい業務のムダについて解説します。
手入力・転記・二重入力が多い
同じ情報を複数の帳票やシステムへ手入力している業務では、入力そのものに時間がかかるだけでなく、転記するたびに確認作業も必要です。例えば、受注内容を表計算ソフトへ入力した後、販売管理や請求処理でも同じ内容を入力している場合、処理件数が増えるほど作業時間が積み重なります。
特に、氏名・商品名・数量・金額など同じ情報を何度も入力している工程は、業務のムダを見つけやすいポイントです。入力先ごとに担当者が異なる場合は、作業の引き継ぎや内容確認にも時間がかかるため、「どの情報を、どこへ、何回入力しているか」を整理しておきましょう。
紙・印刷・郵送・保管が多い
見積書や請求書、申請書、契約書、会議資料などを紙で扱う業務では、用紙やインクなどの費用だけでなく、印刷、封入、郵送、ファイリングといった作業にもコストが発生します。書類が増えればキャビネットや書庫などの保管スペースが必要になり、資料を探す時間が増える点にも注意が必要です。
紙そのものの購入費が少額でも、作成から承認、送付、保管までの工程全体で見ると、多くの作業時間を要するケースも少なくありません。どの書類が日常的に大量発生しているのか、紙でなければならない理由があるのかを確認し、紙が発生する起点から保管までを通して見直すと削減余地を把握しやすくなります。
確認・承認・会議・移動に時間がかかる
業務そのものにかかる時間だけでなく、上司の確認待ちや承認待ち、会議の日程調整などによって発生する待ち時間も見逃せません。紙の申請書を担当者へ回覧している場合や、決裁者が不在になると処理が止まる仕組みでは、実際の作業量が少なくても完了までに時間を要することがあります。
また、情報共有だけで済む内容のために会議を開催したり、短時間の打ち合わせのために移動したりしている場合、その時間も間接的なコストです。会議や承認については所要時間だけを見るのではなく、「待っている時間」「準備する時間」「移動する時間」まで含めて確認すると、業務の停滞につながっている工程を見つけやすくなります。
情報が分散して探す・問い合わせる時間が発生している
顧客情報や案件状況、見積書、在庫情報などが部署ごとのファイルや個人のパソコン、紙書類などに分散していると、必要な情報を探すだけで時間がかかります。どこに最新情報があるのかわからなければ、担当者への問い合わせや複数資料の照合も必要です。
特定の担当者しか情報の保存場所を把握していない状態では、その人が不在の際に業務が止まる原因にもなります。「必要な情報へすぐアクセスできるか」「同じ情報が複数の場所に保存されていないか」といった視点から、情報を探すために使っている時間を洗い出してみましょう。
ミス・やり直し・重複作業が多い
入力間違いや転記漏れ、認識違いなどは、修正作業だけでなく、内容の確認や関係者への連絡、書類の再作成といった追加業務の原因です。一つひとつのミスへの対応時間は短くても、同じ問題が繰り返されていれば年間では大きな工数になる可能性があります。
また、部署間で情報共有ができておらず、別々の担当者が同じ資料やデータを作成している状態も典型的な重複作業です。単に「ミスが多い」と捉えるのではなく、どの工程で何度やり直しが発生しているのか、そのたびに誰の作業が増えているのかまで記録すると、改善すべき箇所を特定しやすくなります。
在庫・購買の状況が見えず余剰や重複発注が発生している
在庫数や発注状況を正確に把握できていないと、必要以上の商品や資材を仕入れたり、すでに発注済みのものを再度注文したりする可能性があるため注意が必要です。過剰在庫は仕入れ資金が在庫として滞留するだけでなく、保管スペースや管理、廃棄などの負担にもつながります。
特に、在庫表と実際の在庫数が一致していない場合や、部署・拠点ごとに別々に発注している場合は注意が必要です。現在庫だけでなく、発注済みの商品や今後必要になる数量まで把握できているかを確認し、余剰在庫や重複発注がどこで生じているのかを整理することが、購買コストを見直す出発点になります。
DXで削減しやすいコストと具体的な方法

DXを活用すると、日々の業務にかかる時間や紙・移動・在庫管理など、さまざまなコストの見直しが可能です。ここでは、DXで削減しやすいコストと具体的な方法について解説します。
作業時間・残業代|定型業務や集計作業を自動化する
毎日・毎月繰り返す定型業務は、RPAや業務システムの自動処理機能を活用すると作業時間を短縮できます。特に、手順が決まっている次のような業務は自動化しやすいでしょう。
複数システムへのデータ入力
売上データの集計
定型レポートの作成
自動化によって作業量を減らせれば、繁忙期の残業を抑え、空いた時間を営業や顧客対応などに充てられる点もメリットです。まずは処理件数が多く、一定のルールで進められる業務から取り組むと、削減効果を確認しやすくなります。
印刷・郵送・保管費|書類や申請・契約をペーパーレス化する
見積書や請求書、契約書、社内申請などを電子化すると、紙代や印刷費、封筒代、郵送費などを削減できます。電子契約や電子申請の仕組みを取り入れれば、印刷・押印・郵送といった紙を前提とする工程そのものを減らせるため、書類を扱う担当者の作業負担軽減にも有効です。
書類をデータで管理すれば、キャビネットや書庫などの保管スペースを縮小できるほか、必要な書類を検索して確認しやすくなります。ただし、帳簿や取引関係書類には保存方法や保存期間に関するルールがあるため、電子化する際は関係法令の要件も確認して運用することが重要です。
会議・移動コスト|情報共有や打ち合わせをオンライン化する
社内会議や取引先との打ち合わせをオンラインで実施できる環境を整えると、会議のための出張や拠点間移動を減らすことが可能です。特に複数拠点を持つ企業や外出の多い営業部門では、Web会議やチャット、オンライン上の資料共有を組み合わせることで、交通費だけでなく移動に費やしていた時間も削減できます。
すべての会議をオンラインに切り替える必要はありません。対面で行う価値が高い商談や重要な打ち合わせは残し、定例会議や進捗確認などオンラインでも支障が少ない場面を切り分けると、コミュニケーションの質を保ちながら効率化しやすくなります。
IT運用コスト|クラウド化や重複システムの整理で管理負担を見直す
自社でサーバーや業務システムを保有すると、機器の購入・更新だけでなく、保守やバックアップ、障害対応にも費用や工数が必要です。業務に適したクラウドサービスへ移行すれば、サーバー管理などをサービス提供側に任せやすくなり、社内の運用負担を軽減できます。
あわせて、次のような無駄がないか確認しましょう。
部署ごとに似た機能のサービスを契約している
利用されていないアカウントが残っている
使われていないシステムを維持している
必要な機能やデータ連携、セキュリティを確認してサービスを整理することで、ライセンス料に加え、システム管理にかかる工数の削減にもつながります。
在庫・仕入れコスト|在庫・購買データを一元管理する
販売・仕入れ・在庫の情報を同じシステムで管理すると、商品ごとの在庫数や入出庫状況を把握しやすくなります。受注や販売のデータと在庫数を連携して自動更新できる仕組みを整えれば、担当者が複数の台帳やシステムを確認しながら在庫数を調整する手間の軽減にも有効です。
在庫状況を継続的に把握できれば、必要以上の仕入れや同じ商品の重複発注の防止にも有効です。さらに販売実績と在庫データを蓄積して分析することで、商品の動きを踏まえて発注量を調整できるようになり、在庫を抱えるための資金や保管スペースの適正化にもつながります。
ミス・手戻りコスト|データ連携で転記や入力ミスを減らす
受注情報を販売管理システムへ入力し、その内容をさらに請求システムへ転記するといった業務では、同じ情報を扱う回数が増えるほど入力間違いや抜け漏れが起こりやすくなります。システム間でデータを連携し、一度登録した情報を後工程でも利用できるようにすれば、人が転記する工程そのものを減らせる点がメリットです。
入力ミスが減れば、誤ったデータの確認や修正、関係部署への問い合わせ、帳票の再作成など、ミスから派生する作業も抑えられます。個別の入力作業だけを効率化するのではなく、データがどこでつくられ、どの業務まで引き継がれているかを確認して連携範囲を決めることがポイントです。
間接業務の工数|AI・生成AIで情報整理や文章作成を効率化する
生成AIは、メールや社内文書の下書き、長い資料の要約、文章の校正、アイデアの整理など、情報を扱う間接業務の補助に活用可能です。定型的な情報整理や文章作成を効率化できるため、こうした間接業務にかかる時間を短縮しやすくなります。
ただし、生成AIの出力には誤りや不正確な内容が含まれる可能性があるため、重要な業務で利用する場合は、人による確認を含む運用ルールを設けることが重要です。顧客情報や機密情報の入力ルール、利用できるサービス、出力内容の確認方法なども定め、リスクを管理しながら時間短縮につなげることが求められます。
DXでコスト削減を進める手順

DXでコスト削減を実現するには、現状の業務を整理し、削減目標を定めたうえで段階的に改善を進めることが重要です。ここでは、DXでコスト削減を進める手順について解説します。
1. 業務を棚卸しして無駄な作業とコストを可視化する
DXを始める前に、対象業務を洗い出し、誰が・何を・どのような手順で・どれくらいの頻度で行っているかを整理します。あわせて、業務全体の流れを把握するため、次の項目も確認しましょう。
作業時間と発生頻度
担当人数
使用しているシステムや帳票
前後の工程
棚卸しした内容はできるだけ数値で記録し、どこに多くの時間や人手がかかっているかを把握することが重要です。担当者へのヒアリングだけでなく実際の作業手順も確認すると、改善すべき工程を具体的に特定しやすくなります。
2. 削減効果が大きい業務から優先順位を付ける
業務を可視化したら、すべてを一度に改善するのではなく、期待できる削減効果と取り組みやすさを比較して優先順位を決めます。発生頻度が高く、多くの従業員が関わる業務は、1回あたりの改善効果が小さくても、年間では大きな効果につながるケースも少なくありません。
| 比較する項目 | 確認するポイント |
|---|---|
| 期待できる効果 | 作業時間や残業時間、ミス、費用などをどの程度削減できるか |
| 導入の難易度 | 業務フローや既存システムを大きく変更する必要があるか |
| 対象人数 | 改善による効果を受ける従業員がどの程度いるか |
| 実施までの期間 | 導入準備や設定、教育などにどの程度の期間が必要か |
削減効果が大きくても、既存システムへの影響が大きい業務や、複数部署との調整が必要な業務は導入負担が高くなりがちです。複数の観点から比較し、削減効果が期待でき、比較的取り組みやすい業務から着手すると進めやすくなります。
3. 削減目標とKPIを設定する
取り組む業務を決めたら、DXによってどの状態を目指すのかを明確にし、その達成度を確認できるKPIを設定します。対象業務に応じて、作業時間や残業時間、エラー件数など、導入前後で比較できる指標を選ぶことが重要です。
| KPIの例 | 導入前 | 目標値 | 達成期限 |
|---|---|---|---|
| 月間作業時間 | 30時間 | 20時間 | 3か月後 |
| 20時間 | 10時間 | 6か月後 | |
| 月間エラー件数 | 10件 | 5件以下 | 3か月後 |
| 1件あたりの処理時間 | 15分 | 10分 | 3か月後 |
KPIには目標値だけでなく、導入前の数値と達成期限も設定しておきましょう。基準を明確にして定期的に数値を確認することで、施策の効果を客観的に判断し、必要に応じて運用方法や対象業務を見直しやすくなります。
4. 業務フローを見直して必要なツールを選定する
改善したい業務が決まっても、現在の手順をそのままシステム化するとは限りません。まず業務フローを確認し、不要な工程の廃止や作業の統合、手順の標準化を検討します。
そのうえで、ツール選定に必要な条件を整理します。
必要な機能
データ連携の可否
利用人数
操作性や使いやすさ
先に製品を決めるのではなく、改善後の業務フローに合うツールを選ぶことが重要です。必要な条件を明確にして比較すれば、不要な機能や過剰な投資を避けやすくなります。
5. 小さな範囲で導入して現場へ定着させる
ツールや新しい業務フローを導入するときは、特定の部署や担当業務など対象範囲を限定して試す方法が有効です。実際の業務で一定期間運用すれば、事前の検討ではわからなかった操作上の問題や既存業務との不整合を把握でき、本格展開前に修正できます。
試行期間中は、利用者から使いにくい点や改善してほしい点を集め、設定や運用ルールを調整します。操作方法や担当者、問い合わせ先なども整理し、現場が継続して利用できる状態をつくったうえで対象部署を広げることが、導入後に使われなくなる事態を防ぐうえでも重要です。
6. 導入前後のコストを比較して改善を続ける
一定期間運用したら、設定したKPIをもとに導入前と導入後の数値を比較します。作業時間や残業時間、処理件数などは、できるだけ同じ条件・期間で比較することが重要です。繁忙期や業務量の増減など結果に影響する要因がある場合は、それらも踏まえて評価します。
期待した効果が出ていない場合は、ツールそのものだけでなく、対象業務や利用方法、運用ルールにも原因がないか検証が必要です。効果を定期的に測定し、課題を把握して改善内容を見直すサイクルをつくることで、一度の導入で終わらない継続的なDXにつなげられます。
DXの費用対効果を判断する方法

DXの費用対効果を正しく判断するには、導入・運用にかかる費用と、削減できた工数やコスト、事業成果を数値で比較することが重要です。ここでは、DXの費用対効果を判断する方法について解説します。
導入費用だけでなく運用・教育・保守まで含めて比較する
DXの費用対効果を判断するときは、ツールやシステムの初期費用だけでなく、導入後に継続して発生するコストまで含めて考えることが重要です。導入から運用までに、どのような費用や工数が発生するのかを整理しておきましょう。
| 費用・工数の項目 | 主な内容 |
|---|---|
| 初期費用 | システム導入費、初期設定費など |
| 月額・ライセンス費用 | 月額利用料、利用人数に応じたライセンス料など |
| データ移行費用 | 既存データの整理、移行、確認にかかる費用や工数 |
| 教育・研修費用 | 従業員への操作説明や研修に必要な費用・時間 |
| 保守・サポート費用 | システムの保守、問い合わせ対応、サポート契約など |
| 追加対応費用 | 機能追加や設定変更などに発生する費用 |
導入費用が安くても、運用や教育に多くの人手がかかったり、追加機能や保守に継続的な費用が必要になったりすれば、想定した削減効果を得られない場合があります。一定期間に発生する総コストと、その期間に得られる削減効果を比較して費用対効果を判断しましょう。
削減時間・残業時間・ミス件数などを数値で測る
DXの効果は、「作業が楽になった」「便利になった」といった感覚だけで判断せず、導入前後の変化を数値で確認することが重要です。対象業務にあわせて、作業時間や残業時間、ミス件数など、継続的に比較できる指標を記録しましょう。
| 指標 | 導入前 | 導入後 | 改善効果 |
|---|---|---|---|
| 月間作業時間 | 30時間 | 10時間 | 20時間削減 |
| 月間残業時間 | 20時間 | 8時間 | 12時間削減 |
| 月間入力ミス件数 | 10件 | 2件 | 8件削減 |
| 月間手戻り件数 | 6件 | 2件 | 4件削減 |
数値で比較すれば、どの程度の改善効果が得られたかを客観的に把握することが可能です。さらに、削減した作業時間に人件費の目安を掛けて金額に換算すれば、複数のDX施策を比較するときの判断材料としても活用できます。
削減額と投資額から投資回収期間を確認する
DXへの投資が妥当か判断する方法の一つが、導入にかかった費用を削減効果によって何年で回収できるかを確認する方法です。例えば、導入や設定などに150万円かかり、運用費を差し引いた年間の削減効果が60万円であれば、単純計算では約2.5年で投資額を回収できることになります。
回収期間を比較すれば、「削減額は大きいものの投資額も高い施策」と「削減額は小さいものの少額で始められる施策」の違いも整理できます。ただし、将来の削減効果を過大に見積もると判断を誤るため、実際の利用状況や運用費を踏まえて定期的に計算し直し、継続・拡大・見直しを判断することが大切です。
コスト削減だけでなく生産性や売上への影響も確認する
DXの効果は、経費がいくら減ったかだけでは十分に評価できません。作業時間が短縮され、その時間を営業活動や顧客対応、商品・サービスの改善などに振り向けられれば、同じ人員でもより多くの業務を進められる可能性があります。そのため、従業員一人当たりの処理件数や売上高など、生産性に関する変化も確認しましょう。
さらに、問い合わせへの対応速度や受注機会、顧客への提案数、売上高など、事業成果への影響も確認するとDXの価値をより広く把握できます。実際にDXは業務負担の軽減だけでなく、製品・サービスの価値向上や新たな事業の創出を通じて業績向上につながる可能性もあるため、短期的な削減額と中長期的な成果の両面から評価することが重要です。
中小企業がDXの導入コストを抑える方法

DXの導入では、必要以上に大きな投資をせず、自社の課題や規模に合った方法を選ぶことが重要です。補助金なども選択肢です。ここでは、中小企業がDXの導入コストを抑える方法について解説します。
既存のクラウドサービスや標準機能を活用する
DXの導入コストを抑えるには、最初から自社専用のシステムを開発するのではなく、既存のクラウドサービスを優先的に検討することが有効です。自社でサーバーやシステム環境を構築する場合と比べて、初期の設備投資や運用負担を抑えられる場合があります。
| 確認項目 | 確認するポイント |
|---|---|
| 標準機能 | 自社の業務を標準機能だけで対応できるか |
| 必要な機能 | 業務に不要な機能まで含まれていないか |
| 利用人数 | 実際に利用する人数に合った料金プランか |
| 外部連携 | 既存のシステムやツールと連携できるか |
| サポート | 導入・運用時に必要な支援を受けられるか |
自社独自の機能を追加すると、開発費だけでなく保守費も増える可能性があるため注意が必要です。まずは標準機能で対応できる範囲を確認し、自社に必要な機能や利用条件へ絞って導入することが、継続的なコストの抑制につながります。
全社導入ではなく対象業務を絞ってスモールスタートする
最初から複数の部署や業務へDXを広げると、利用料だけでなく、設定やデータ移行、従業員への教育などに必要な費用も大きくなります。そのため、まずは請求処理や勤怠管理など、改善効果を確認しやすい一つの業務や部署に対象を限定して導入する方法が有効です。
対象を限定すれば、必要なアカウント数や機能を絞れるため、初期費用や月額費用を抑えやすくなります。
補助金・支援制度を活用する
DXに必要なソフトウェアやクラウドサービスなどを導入する際は、国や自治体が実施する補助金・支援制度を確認しましょう。制度によっては、ITツールのソフトウェア購入費に加え、クラウド利用料や導入設定、研修、保守サポートなども補助対象になる場合があります。設備や省力化製品を導入する場合には、別の支援制度も選択肢です。
ただし、補助対象となる経費や申請要件、受付期間は制度ごとに異なります。補助金によっては交付決定前に契約・発注・支払いをすると対象外になるため、ツールを購入してから制度を探すのではなく、導入計画を立てる段階で最新の公募要領や申請スケジュールを確認することが大切です。
DXによるコスト削減で失敗しないためのポイント

DXによるコスト削減では、費用だけを優先すると現場負担の増加や業務品質の低下につながる場合があります。導入目的や運用方法、安全性まで含めて検討することが重要です。ここでは、DXによるコスト削減で失敗しないためのポイントについて解説します。
ツール導入を目的にせず削減したいコストから逆算する
DXを進める際は、「新しいツールを導入すること」自体を目的にしないことが重要です。先にツールを選ぶと、必要のない機能まで導入したり、既存の業務に合わず新たな作業が増えたりする可能性があります。まず、残業代や書類管理費、在庫ロスなど、何をどの程度改善したいのかを明確にしましょう。
そのうえで、削減したいコストがどの業務から発生しているのかを確認し、必要な機能だけを備えた仕組みを検討することが重要です。ツールありきではなく、解決したい課題を起点に選定することで、投資が成果につながらない事態を防ぎやすくなります。
削減額だけを追わず業務品質や顧客対応への影響も確認する
コスト削減の効果が大きくても、商品・サービスの品質低下や顧客対応の遅れにつながっては、DXの効果を十分に得られません。例えば、人が確認していた工程を自動化する場合は、処理時間だけでなく、誤処理や問い合わせの増減なども確認する必要があります。
導入後は、削減額や作業時間だけで評価せず、ミス率、顧客からの問い合わせ件数、対応時間などもあわせて確認しましょう。コストと業務品質の両面から判断すれば、短期的な削減によって別の負担を増やすリスクを抑えられます。
現場の負担が増えない運用ルールを設計する
使い方が複雑だったり、従来の作業と新しい入力作業が二重に残ったりすると、DXによって現場の負担が増える場合があります。定着させるには、実際の業務にあわせて運用ルールを明確にすることが重要です。
具体的には、次の点を整理しておきます。
誰が、いつ、どの情報を登録・確認するか
例外的な処理が発生した場合の対応方法
問い合わせ先や設定変更の担当者
運用開始後も現場の意見を確認し、入力項目や手順を必要に応じて調整すると、無理なく利用を続けられる環境を整えやすくなります。
既存システムとの連携やデータ移行まで確認する
新しいシステムを導入するときは、単体の機能だけでなく、既存システムと連携できるかの確認が必要です。連携できずデータの再入力が必要になると、工数やミスが増え、コスト削減効果が薄れるおそれがあります。
システムを切り替える場合は、事前に次の点を整理しましょう。
移行するデータの範囲
項目や形式の違いへの対応方法
移行作業や確認を行う担当者
あわせて、本番切り替え前にデータ移行をテストしておくと、業務停止やデータ欠損などのトラブルを防ぎやすくなります。
セキュリティと権限管理を考慮する
クラウドサービスや業務システムで顧客情報や取引情報を扱う場合は、導入段階からセキュリティ対策を検討することが必要です。扱う情報や想定されるリスクに応じて、次の点を確認しましょう。
多要素認証の設定
データのバックアップ
操作ログの取得
担当業務に応じたアクセス権限の設定
アクセス権限は必要な範囲に限定し、異動や退職時には速やかな変更・削除が必要です。不要な権限が残らないよう定期的に見直すことで、不正アクセスや情報漏えいのリスクを防ぎやすくなります。
効果が出ないツールは見直せるよう定期的に評価する
業務内容や利用人数などが変わると、導入時に適切だった契約でも現在の状況に合わなくなることがあります。
定期的に利用状況を確認し、次のような見直しを検討します。
利用頻度が低い機能のプラン変更
使われていないアカウントの削減
費用対効果が低いツールから別の方法への切り替え
導入後も現在の業務に必要かという視点で評価することで、不要なITコストを抑えられます。
業務のムダを見える化して費用対効果の高いDXから始めよう

DXによるコスト削減では、単に支出を減らすのではなく、手入力や紙業務、確認作業、重複入力など、日々の業務に潜むムダを見直すことが重要です。削減したいコストや業務を整理したうえで、効果を確認しやすい範囲からデジタル化・自動化を進めれば、作業時間や残業時間を抑えながら、限られた人員でも業務を回しやすい仕組みを整えられます。
現在使っているExcelや紙の業務フローをもとに社内システムを整えたい場合は、BRISKのDX支援もご検討ください。Excel・スプレッドシートのWebシステム化や社内ポータルの構築、申請・承認業務のWeb化、システム間のデータ連携など、既存業務を生かした仕組みづくりに対応しています。エンジニアが直接ヒアリングし、開発から運用後の保守まで支援しているため、自社の業務に合ったDXを具体化したい場合は相談してみましょう。





